症候群(シンドローム)が多すぎる!?
この世の中には、ありとあらゆる症候群(シンドローム)が存在しています。
番組を見終わると、“明日からまた学校や仕事に行かなくては・・・”という現実に直面し、憂鬱になる「サザエさん症候群」、映画「レインマン」(米/1989)でダスティン・ホフマンが演じた、知的障害や発達障害があるにもかかわらずある特定の分野で優れた能力を発揮する「サヴァン症候群」、そして、脳溢血によるこん睡状態から目覚め、意識と記憶は回復し、音は聞こえるが言葉は話せず、全身が重度の麻痺におかされ、眼球の動きのみで意思を伝えたという世界的ファッション誌「ELLE」の元編集長ジャン・ドミニック・ボービーの自伝が原作となった映画「潜水服は蝶の夢を見る」(仏/2008)で知られる「閉じこめ症候群」などなど、それってちょっとした気分の落ち込みじゃないの的なものから、限りなくこの世の絶望に近いものまで、あまりに守備範囲が広すぎる「○○症候群」ですが、とにかくたんまりと存在しているのであります。
そもそも症候群とは“病気”ではなく、“症状の集まり”のことをいいます。病気とはその根本原因がはっきりと特定されているものに名前をつけたもの。ところが、症候群には特定の原因というものがありません。もう少し詳しくいうと、原因が特定されておらず、複数存在していて、これだ!ってぐあいには決められないけれど、同じような状態を訴える人たちがいっぱい存在する症状のこと。原因が特定できない、というだけで、病気とはいえないのです。なんだかややこしいですが・・・。
シックハウス症候群とはいったい何なのか?
私は小学校入学前に、愛知県名古屋市から郊外の田舎町へ引っ越しました。いまはコンビニができましたが、当時(1970年代後半)はそんなカテゴリーすら存在せず、AEONもなく、最寄駅には45分に1本しか電車がきませんでした。まぁ、そんなことは就学前の男子にはなんの興味もないことで、週末ごとにダディのクルマに乗って新しい家の建築現場へ家族で行き、家がどんどんどんどんおっきくなっていくのをみながら、兄弟3人でワーワーキャーキャーいいながら騒ぎ倒し、マミーが作ってくれたお弁当を、材木の上にぴょこっと座って食べたものです。
そのうち、何度かその現場へ通っていると、家の中に入るたびに、目がチカチカするようになりました。ダディやマミーにそのことをつげても、“新しい家だからね”といわれただけです。もちろん子供ですから、“そなんだぁ”と当時は思っただけでした。この“目がチカチカ”は、たぶん建材から発生した化学物資が原因だったのではないか、といまは考えています。
私の場合はこの“目がチカチカ”だけですんだのですが、厚生労働省の「生活環境におけるシックハウス対策」によれば、世の中にはこの“目がチカ”にとどまらず、鼻水やのどの乾燥、吐き気、頭痛、湿疹、睡眠障害、倦怠感などさまざまな症状があらわれるようです。原因としては、「建材や調度品などから発生する化学物質(ホルムアルデヒド・VOC<トルエン、キシレンなど>などの揮発性有機化合物)、カビ・ダニなどによる室内空気汚染等」があげられ、「医学的に確立した単一の疾患ではなく、居住に由来する様々な健康障害の総称を意味する」としています。
シックハウス症候群はなぜ生まれたか?
日本古来の和の建築手法によって建てられた家は、空調を一切使用せず、瓦屋根や土壁、建具の程よいすき間などによって自然換気がされてきました。しかし、近代建築においては空調を効率的に行うために高気密をコンセプトとした家やマンションが建てられるようになり、建材には化学物質が使用されるようになりました。そのため、有害な物質が戸外へ排出されず、さらに細菌やカビ、ダニが繁殖しやすい環境となっているため、シックハウス症候群が起こったとされます。
では、同じような環境にいれば、誰もがシックハウス症候群となるかといえばそうではなく、個人差が大きいのが特徴で、これによって原因を特定することを難しくもしているのです。
国が行うシックハウス対策は?
現在、国が策定したシッククハウス対策として、大きく3つあげることができます。
1. 厚生労働省室内化学物質濃度指針値
2. 建築基準法のシックハウス対策
3. 住宅性能表示制度
厚生労働省では、平成12年4月に設置した「シックハウス問題に関する検討会」において、13の化学物質について室内濃度指針値を策定するとともに、化学物質への不必要な曝露を総量で抑制する考え方に基づいて、総揮発性有機化合物(TVOC)の暫定目標値を設定しました。
これを踏まえて平成12年10月にスタートしたのが「住宅性能表示制度」です。地震などに対する強さ、火災に対する安全性など8分野に加え、新たに「シックハウス対策」という分野を追加。シックハウスの原因物質のひとつとされるホルムアルデヒドが含まれている建材の使用状況や換気設備を評価します。
そして最後が、平成15年7月1日に施工された改正建築基準法で、シックハウスの原因となる化学物質の室内濃度を下げるため、建築物に使用する建材や換気設備を規制するものです。刺激性のあるホルムアルデヒドを発散する建材の内装仕上げに対する面積制限や、機械換気設備設置の義務付け、天井裏の制限や、しろあり駆除剤のクロルピリホスの使用を禁止するというもの。
シックハウス症候群はなくなったか?
1980年代から90年代にかけて、いまでいうシックハウス症候群と思える症状が全国各地で報告されはじめ、徐々に住環境における室内汚染が原因ではないかという声の高まりとともに、国は平成12年から15年にかけて対策を試みました。ではそれから10年以上が経過し、シックハウス症候群はなくなったでしょうか?
その答えはNo!です。
グーグルやヤフーなどでシックハウス症候群と入力して検索してみてください。でてくる結果は、シックハウス症候群が何かを解説したサイトばかりで、しかもどの内容もほとんど同じ。換気をしましょう、化学物質を暮らしの中から減らしましょうなどなど、10年経っても何の変化もありません。増えているのは、シックハウス症候群を発症した家族の悲痛な叫びがつづられたブログばかりです。
何が原因なのでしょうか?
私は、それは国の対策が、現実に基づいていないからだと考えています。
・ひとの体を脅かす化学物質が指針値や目標値を設定した14だけであるはずがない。
・指標値や目標値を下回っていても、そこに化学物質が存在していることは間違いない。
私はそう思っています。
◆シックハウス症候群を発症しているあなたへ
シックハウス症候群を発症し、抗酸化工法によって健康を取り戻した方がいらっしゃいます。
お二人の貴重な体験談を、ぜひお読みください。